金城次郎館たより(20240403)金城次郎館の2024年第二期4月から6月が4月6日土曜日から始まります。「うりずん 雑器の美」です。金城次郎さんの本領を堪能していただけるものと確信いたしております。ミュージアムショップでは、鳥取岩井窯の山本教行さんの個展をおこないます。6日は山本さんが在廊されます。展示即売です。 

金城次郎館たより(20240322)1972年に金城次郎が読谷村に工房と住居を移してから、線彫りの色差し魚文の作品が大量につくられたことはよく知られている事実です。金城次郎というと魚の模様を想い浮かべる人がほとんどでしょう。しかし1972年以前の壺屋時代には、魚文の品物はむしろ少なく、線彫り色差し以外の技法の魚文がたくさんありました。いろいろな種類の魚文のなかから、読谷に移って線彫り色差しが選ばれたというのか正確な表現だとおもわれます。では、壺屋時代の次郎さんの魚文はどのように生まれたのか?

この疑問に答えるための、大きなヒントがあります。次郎さんの線彫り魚文(色差しなし)の扁壺と、李氏朝鮮王朝時代の線彫り魚文の扁壺(写真)を見較べると、魚文がよく似ているだけでなく、その口などの形もそっくりなことがわかります。濱田庄司その人でなくても、写真などで李氏朝鮮王朝時代のこの手の三島の扁壺を次郎さんに見せた人(民藝関係の?)がいたと考えるのはあながち不自然なことではありません。

魚の向きが左右逆であり、扁壺の形がかなり違うこと、次郎さんの魚には胸ヒレのほかにもう一つ腹ヒレがあり、そのままのコピーになることは避けられています。写真のものは魚二匹ですが、たしか三匹の作もあったはずです。次郎さんの魚文が李氏朝鮮時代の線彫り魚文からつくられたとは即断できませんが、その淵源のひとつであることは、確かにおもわれます。

この次郎さんの扁壺の展示は今月中で終了します。3月23日、24日、30日、31日の土曜日日曜日に是非おこしください。次回展示は数年先になる可能性があります。

金城次郎館たより(20240210)旧正月です、おめでとうございます。久しぶりに晴れて暖かい、というか暑くなっています。金城次郎館は土曜日日曜日をオープンしています。もう一昨年になりますか、金城次郎館を建設することを決めてすぐに、柚木沙弥郎先生に舘のロゴのデザインをお願いしました。すぐに縦と横の二つをお送りいただきました。沖縄には一台とかいう、レザーで鋼板をデザインどおりに斬る機械でロゴが造られました。金城次郎館では撮影スポットになっています。柚木沙弥郎先生の温和なお顔を想い出しつつ。 

金城次郎館たより(20240101)穏やかに晴れた元日、1月6日土曜日からオープンする「花花 花器」展と同時に、ギャラリー杜(むい)ぐすくで蒐めてきた品物を展示即売する「日本と東アジアの新古民芸」展のために、会場設定と品物のディスプレイを始めました。まあ每日が正月のような生活をしてるから、取りたてていうこともないのですが、元日に働くのは生まれて初めてではないかしらん。写真のように、一応ディスプレイを終えました。もう二三日あれやこれや動かして、完成度を高める努力をします。 

金城次郎館たより(20231109)今日は山原の大宜味村にある通称「大窯」に出かけました。四つの工房の共同窯なんですが、そのうちのひとつは菅原謙さん一人ですべてをこなしています。菅原さをは沖縄県立芸術大学を卒業していますが、一貫して沖縄の伝統のヤチムン(焼物)をつくっています。芸大というとアート、という人が多いなかで、工芸の道をずっと歩いてきたつくり手です。金城次郎館では11月19日から12月31日までの菅原謙さんの個展をエントランスホールのミュージアムショップで開きます。毎日曜日の正午から午後5時までオープンです。展示即売現金のみ。今日は昨日から始まっている窯出しの具合を見せてもらいました。 火がすこし強かったかな、しかしそのためアガリ(出来上がりの状態)はすぼらしく、いやがうえにも個展が待ち遠しくなりました。来週半ばには金城次郎館に搬入、飾り付けがおこなわれます。ケガをしている初めて試みられた絵付けの陶板と、他の方の注文品の抹茶盌を一つ無理にお願いして持ちかえりました。写真は参考にしかなりませんが、掲げておきます。茶盌は早速使いましたが、高台が大きく(河井寛次郎一門の茶盌のように)感じましたが、とてもよく手に馴染みます。刷毛目も独特。 

金城次郎館たより(20231021)金城次郎館は明日も正午から午後5時までオープンします。金城次郎のつくった厨子甕(ジーシガーミ)とその関連作が20点近く展示されています。おそらく金城次郎関係の展示企画では初めての厨子甕展です、是非この機会にご観覧ください。次郎さんの造形の力がよくわかっていただけると思います。あわせて宮國榮一さんの個展(展示即売)が金城次郎館のホールのミュージアムショップでおこなわれています。こちらは10月で終了しますので、お急ぎください。写真は東京の骨董市で出会った、金城次郎の二彩点打ちの三寸皿。径10センチ足らずの小皿ですが、存在感が違います。 

金城次郎館たより(20230922)9月24日が初日になる定例展示「甘露の候 厨子甕展」はこれまでとちょっと違うディスプレイを試みました。金城次郎自身が手がけた大きな厨子甕から小さめのもの、厨子甕からの展開としての香炉や角鉢、傘立てに火鉢などを一挙に公開するのですが、その背後には新垣照男さんの絵を展示しました。新垣照男さんは終戦で復員して沖繩に帰ることができたのですが、戦争の体験がトラウマとなって人とのコミュニケーションがとれなくなり、人から離れて放浪するよいになったそうで、やがて沖繩の近親知人とも連絡がとれなくなっていきました。そして、ある日親戚のYさんに、内地の警察から連絡が入りました。体調を崩して行き倒れになっていたところを保護されたのでした。沖繩にいたとき、親戚の女性が氏名、本籍、親しい人の連絡先を書いた紙片を縫い込んだ布をネックレスのようにつけておいたのが役立ったのでした。Yさんは照男さんを引きとり、沖繩の施設に入居させましたが、はじめはなかなか心を開かない照男さんにてこずったようです。しかしやがて、照男さんも落ち着いてきましたが、ほかの人とデイサービスなどで交わることはありませんでした。孤独な照男さんに、画材を渡したのは、自らアーティストで美術の教師であったYさんでした。照男さんは予想とは違って熱心に絵を描き始め、はっきりとしたスタイルの風景画が続々と描かれました。照男さんの絵の展示会を訪ねて、その美しいのに撃たれ、私たちもギャラリー杜(むい)ぐすくで、展示会を開催しました。照男さんがなくなって、Yさんから頂戴した照男さんの絵は大切に保管してきました。ようやく公開の機会をえることができました。次郎さんの厨子甕にせよ、新垣照男さんの絵にせよ、その美しいことは「生死(しょうじ)」の謎につながっていくように思えてなりません。 

金城次郎館たより(20230921)金城次郎館は9月24日(日曜日)から、新しい展示を始めます。年内3ヶ月の予定で金城次郎自身の厨子甕(ジーシガーミ)とその関連作を20点以上まとめて展示します。金城次郎の厨子甕がこのようにまとめて多数展示されるのは、初めてのことと思います。通常の雑器などとは胎土のつくり方も違っていて、その形は雄勁という形容がぴったりで、本来の使途とは別に造形としても大変に美しいものです。古波蔵保好のように次郎さんの厨子甕の中で眠る人たちも多く、濵田庄司をはじめたくさんの所蔵者を魅了した金城次郎の高雅な姿を是非ご高覧いただきたいと思います。(とくに沖繩の方がたのために特記しますが、どの厨子甕も使用されたものではありません。)オープンは毎日曜日正午から午後5時までです。 

金城次郎館たより(20230822)先週の金曜日8月18日の『沖縄タイムス』に、金城次郎館のミュージアムショップで開催中の「島袋常秀大皿展 金城次郎に学ぶ」の展評が掲載されました。見出しの「大皿五十年」というのは、秀逸のキャッチコピーと思い、新作旧作からこれは、と選らんだ大皿たつも喜んでいることと思います。若いときから、紐つくるの大皿をこのように作り続けられたのは、島袋常秀さんが唯一と思われます。その加飾の多様さと、壺屋の伝統技法の習得のうえでの確かさは、皆様にぜひご覧いただきたく案内させていただきます。金城次郎館の展示テーマは「ハレの茶」で、次郎さんの茶器と、濵田庄司の茶器やバーナード・リーチの沖縄でつくった赤絵の皿など、珍しい作品が多く展示されています。 

金城次郎館たより(20230703)「若夏 ハレの茶」展と、併催のホールの「島袋常秀大皿展」は第一日を無事終えました。遠くからお出でいただいた方がたもいらっしゃいました、ありがとうございました。会場にいてくださった常秀さんからはいろいろとお話をうかがえて、私もたいへん有意義な一日でした。島袋常秀作の大皿をまとめて見る機会がありませんから、その多様な技法には改めて勉強することがいっぱいあります。写真は大皿展会場、右手の皿立てに最大級の大皿がすらりと並ぶ様子(写真に写っていないのがまだ五枚!)は壮観です。 

金城次郎館たより(20230702)今日は「若夏 ハレの茶」の初日です。ガラスの展示の大ケースの中に、茶の会を想定して、次郎さんの茶碗、水指などを配置して展示しました。炉縁と釜に向かって左手に主人、右手に客という仮定です。道具つかいは当然民藝です。ガラスケース全体もなんとなく茶会の流れを感じてもらえるといいのですが。次郎さんの茶碗と、濵田庄司の茶碗で10碗以上展示しています。

金城次郎館たより(20230701)7月になりました。7月2日から、金城次郎館は新しく「若夏 ハレの茶」が始まります。金城次郎と抹茶というとちょっと違和感を感じられる方もおられるでしょうが、意外と次郎さんはたくさんの抹茶碗をつくっています。次郎ファンでお抹茶を愛好する方か案外多かったのかもしれません。次郎さんの抹茶碗はごくごく普通につくられていて、作為の全く感じられないものです。次郎さんの抹茶碗が六つ出展されます。今回は次郎さんが14歳で新垣工房に就職してからずっと親密だった濱田庄司の作品を合わせて展示します。塩釉の水指など稀少な作品をご覧になれます。庄司の抹茶碗は五つ展示されます。そのほかバーナード・リーチが壺屋で焼いた赤絵の皿など、珍しい品も展示されます。あわせて、ホールのギャラリーでさ島袋常秀さん(沖縄芸大名誉教授)の大皿展を併催します。大皿の名手、島袋常秀の本領を堪能いただけます。お待ちしております。写真は島袋常秀作赤絵筒茶碗(箱書ともで販売)。

金城次郎館たより(20230423)金城次郎館第二回展示「うりずん  日々の茶」の第二週です。壺屋時代の次郎さんの、チューカー(土瓶)やアンビン(水注)、湯呑の優品が展示されています。水滴のいろいろのほか、とても特異な手法でつくられた線刻魚文の大皿がケースに置かれています。陶工を自称していた次郎さんですが、その毎日が研鑽工夫の積み重ねであったことがよくわかります。沖縄の人間国宝の織り手の方々の作品も多数展示されています。 

金城次郎館たより(20230414)金城次郎館では明後日16日から、第2回展示「うりずん  日々の茶」が始ります。これに伴って、エントランスホールでは金城次郎に学ぶ「松田共司個展」を開催します。個展のディスプレイのために、共司さんと工房のスタッフお二人が来てくださっています。写真撮りした時には、まだ半分くらいしか展示されていません。展示作業に奮戦する共司親方。 

金城次郎館たより(20230408)金城次郎館の第一回展示「新春  酒と華」は、明日9日が最後です。16日からは「うりずん  日々の茶」に展示が替わります。金城次郎作品はすべて入れ替えます。約千点の収蔵品数からして、第一回の展示品の再登場は5年以上先になる可能性があります。またエントランスホールの「金城次郎の同時代のつくり手展」も、明日で終了して、「松田共司個展」が始まります。写真は「金城次郎の同時代のつくり手展」、ご観覧お買い上げいただいた皆様には厚くお礼申しあげます。だいたい1980年代以前の優品、身近で愛用いただけたらと思います。 

金城次郎館たより(20230405)『陶説』誌のご好意で、金城次郎館オープンにあたって「雑器から観る金城次郎」という論考を4月号と5月号に連載させていただくことができました。4月号に、(その一)が掲載されました。紙幅をいただけたので、オープンの告知だけではなく、金城次郎館の設立経緯や壺屋時代の金城次郎作品の魅力、次郎館の三つのミッションから、次郎さんの魚文の由来について書かせていただきました。因みに『陶説』は日本陶磁協会の月刊機関誌ですが、広く市販されています。

金城次郎館たより(20230402)午後になると東側に広がる海は、太陽を背中から受けるので、落ち着いた感じに見えます。今年一番美しい海かな。モズク養殖の舟もあまりいません。

金城次郎館たより(20230402)久しぶりに晴れて暑い一日になりそうです。第一回展示「初春 酒と華」は次回4月9日で終了、4月16日からは、第二回展示「うりずん 日々の茶」が始まります。普段のお茶にかかわる壺屋時代の作品が展示されます。また上村コレクションのお披露目として、小品が展示されます。エントランスホールの「金城次郎の同時代のつくり手たち」展も終わり、「松田共司個展」が始まります。共司さんの最新作をお買い求めいただけます。ぜひお越しください。庭のコーヒーの木に、花が一輪だけつきました。何年かして、次郎館コーヒービーンのブレンドを皆様と楽しめるといいですね。

沖縄テレビでご紹介いただきました。
『金城次郎館が2月5日オープン 作品の所蔵は約700点(沖縄テレビ)2023/1/29』

https://www.otv.co.jp/okitive/news/post/00007001/index.html